転職サイトの「適性診断テスト」は受けるべき？結果の活用方法

なぜ転職サイトの適性診断を受けるべきか？（メリットと意義）

前述の通り、転職活動における自己分析は成功の鍵です。しかし、多くの人が「自分自身を深く掘り下げる」という作業に難しさを感じます。

転職サイトが無料で提供する適性診断テストは、この自己分析のプロセスを劇的に加速させるための強力な「初期ツール」として機能します。これは単なるお遊びではなく、多くが心理学や統計学に基づいた本格的な診断ロジックを採用しているからです。

このセクションでは、あなたが転職サイトの診断を受けるべき本質的な理由と、それが転職活動全体にもたらす具体的なメリットを、深く掘り下げて解説していきます。

最大のメリットは「客観的な自己理解」と転職の軸の言語化

自己分析において最も難しいのは、自分の性格や強みを客観的かつ論理的に把握することです。私たちは、自分のことは主観でしか見られません。そのため、以下のような「自己評価の罠」に陥りがちです。

• ハロー効果: 過去の成功体験に引きずられ、実際の能力以上に自分を高く評価してしまう。
• ネガティビティ・バイアス: 失敗や弱みにばかり目が行き、自分の強みや価値を見落としてしまう。
• バーナム効果: 誰にでも当てはまる一般的な診断結果を、自分にだけ当てはまると過信する。

転職サイトの適性診断は、質問項目への回答を統計的に処理し、「あなたの行動特性、価値観、強みは、数万人のデータと比較してこうである」という客観的なデータを提供してくれます。これにより、主観的な思い込みを排除し、論理的な裏付けを持った自己理解が可能になります。

「転職の軸」を明確化する鍵としての診断結果

「転職の軸」とは、「新しい職場で何を最も実現したいか」という企業選びの基準です。この軸が曖昧だと、求人選びがブレたり、面接で説得力がなくなったりします。

適性診断の多くは、「仕事に求める価値観」（例：安定志向、成長志向、人間関係重視、報酬重視）を測定します。この結果は、以下のように「転職の軸」の出発点を与えてくれます。

診断結果のキーワード	言語化される「転職の軸」の例
「協調性」が高い	チームワークを重視し、多様な意見を持つメンバーと協力して成果を出せる環境
「挑戦意欲」が高い	新しい事業やサービス立ち上げに携われ、自身の裁量権が大きい環境
「安定性」を重視	上場企業や大手グループなど、経営基盤が安定しており長期的なキャリア形成が可能な環境

診断結果をこのように分解し、具体的な「軸」に言語化することで、応募企業を選ぶスピードと精度が格段に向上します。

診断結果を元にした求人紹介でミスマッチを防ぐ（マイナビ・dodaなどの仕組み）

大手転職サイトが適性診断に力を入れているのは、登録者へのサービス向上だけでなく、「入社後の早期離職（ミスマッチ）」を防ぐという企業側の明確な目的があるからです。

求人レコメンド機能の精度向上

マイナビ転職やdoda、ミイダスなどのサービスでは、利用者が適性診断を受けることで、その結果が内部のAIアルゴリズムに組み込まれます。

• dodaの例（転職タイプ診断）：「仕事の価値観」と「隠れた性格」を分析し、それを元に求人を提示します。これは、単なる職種や年収といった表面的な条件だけでなく、「その会社で働く人の性格タイプ」や「企業文化」とのマッチングを図るためです。
• ミイダスの例（コンピテンシー診断）：「パーソナリティ」や「ストレス耐性」を測定し、その結果を公開することで、「診断結果を理解した企業」からのスカウトのみが届く仕組みになっています。これにより、企業側も応募者の性格特性を事前に把握した上でオファーを出すため、ミスマッチが大幅に減少します。

企業が求人票に設定する「求める人物像」は抽象的になりがちですが、診断結果を介することで、求職者の「行動特性データ」と企業が求める「特性データ」が結び付けられ、双方にとって有益なマッチングが実現するのです。

「潜在的な可能性」に気づくきっかけ

今の仕事が合わないと感じている人の多くは、自分の強みを現在の職種以外でどう活かせるかイメージできていません。診断結果は、あなたが「挑戦したこともないが、実は適性が高い」職種や業界を提示してくれます。

例えば、現職で営業職だが、診断結果で「分析力」や「論理的思考力」が突出して高いと出た場合、データアナリストや事業企画など、これまで視野に入れていなかったキャリアパスに挑戦するきっかけを与えてくれるかもしれません。

強み・弱み、価値観を知ることで面接での自己PRに深みが出る

面接で「あなたの強みは何ですか？」と聞かれたとき、「真面目です」「粘り強さがあります」といった抽象的な回答では、他の応募者に埋もれてしまいます。

診断結果は、自己PRを**「論理的裏付けのある、具体的なエピソード」**に変えるための強力なツールとなります。

自己PRの説得力を高める「診断キーワードの活用」

診断結果で得られたキーワード（例：達成欲、戦略思考、適応力、共感性など）は、専門的な用語であるため、面接官に「この人は、自分の能力を客観視できている」という印象を与えます。単なる自己申告ではなく、第三者的なデータに基づいているからです。

【Before】「私の強みは粘り強さです。困難なプロジェクトでも諦めずに取り組みました。」

【After】「私の強みは、リクナビNEXTの診断でも示された『目標志向性』です。目標達成のためには手段を選ばず、過去にも（具体的なエピソード）という困難な状況を、この特性によって乗り越えてきました。」

このように、客観的な診断結果のキーワードを冒頭に持ってくるだけで、自己PRの説得力と深みは飛躍的に向上します。面接官は、あなたが提出するエントリーシートや職務経歴書に加え、あなたの「特性」という内部データを短時間で把握できるため、より建設的な議論が可能になります。

「弱み」をポジティブに伝えるための戦略

面接で「あなたの弱みは？」と聞かれることは多いですが、診断結果は、この質問に賢く答えるための材料も提供してくれます。

診断で出た「突出して低い特性」を弱みとして認めつつも、その「裏返し」を強みとして伝えたり、「克服のための具体的な行動」をセットで話すことができます。

• 弱み（例：協調性が低い）と診断された場合 → 「弱みは、協調性よりも単独行動を優先してしまう点です。しかし、裏返せば『迅速な意思決定力と専門性へのこだわり』と捉えています。現在は（具体的な改善策）を意識して、チームでの連携力を高めています。」
• 弱み（例：慎重性が低い）と診断された場合 → 「弱みは、深く考えずに行動してしまう点です。しかし、裏返せば『高い実行力とスピード感』です。現在は、重要な意思決定前には（具体的なチェック手順）を踏むように改善中です。」

このように、診断結果を深く分析することで、面接の質問の意図を理解し、ポジティブかつ論理的な回答を導き出すことができるのです。

【2025年最新版】目的別！おすすめの転職サイト・エージェントの診断ツール10選

前セクションで、転職サイトの適性診断を受けることの重要性は理解いただけたかと思います。しかし、多くのサービスが存在するため、「結局どれを受ければいいのか」と迷う方も多いでしょう。

無料の診断ツールは、その目的によって大きく「適職・価値観」「市場価値・コンピテンシー」「強み・潜在能力」の3つに分類できます。ここでは、あなたの転職目的や知りたいことに合わせて、必ず受けておくべき主要な診断ツールを厳選して紹介します。

仕事の価値観・タイプを測る診断（doda転職タイプ診断、マイナビ適性診断など）

これらの診断は、主にあなたが仕事に求める要素（価値観）と、基本的な性格傾向を測定することに特化しています。「どんな環境で力を発揮できるか」「何をモチベーションに働くか」を知りたい場合に最適です。

1. doda 転職タイプ診断：仕事の価値観と満足度を深く分析

• 診断内容：現在の仕事の満足度と、転職先に求める価値観（安定性、成長、人間関係など）を測定し、あなたの転職タイプ（全6タイプ）を分類します。
• 特徴と活用法：「仕事に求める要素」が明確になるため、「転職の軸」を定める初期段階で非常に役立ちます。診断結果は、そのままdoda内の求人レコメンド機能に利用され、企業とのマッチング精度を高めます。所要時間は約7分と手軽なのも魅力です。
• 専門的補足：診断結果には、「あなたがいまの仕事で満たされている要素」と「不足している要素」がグラフで示されます。この不足要素こそが、次の転職先で最も重視すべきポイントになります。

2. マイナビ転職 適性診断：パーソナリティとバリューを両面から分析

• 診断内容：「パーソナリティ診断」（行動特性や性格）と「バリュー診断」（仕事に対する価値観）の2種類で構成され、あなたの仕事適性を総合的に診断します。
• 特徴と活用法：学術的な研究に基づいた本格的なテストであり、その信頼性が高い点が評価されています。診断結果をマイナビ転職の求人と照合し、「企業が求める適性基準」と「あなたの適性」のマッチング度を確認できます。特に、職種への適性だけでなく、企業風土への適性を重視したい場合に有効です。

3. 求人ボックス 適職診断：登録不要で手軽に性格タイプを把握

• 診断内容：心理学・統計学に基づいた5つの基本的な性格要素（Big Fiveに近い構造）から、あなたの性格傾向を12タイプに分類し、適した職種を紹介します。
• 特徴と活用法：会員登録が不要で、すぐに診断結果が見られるため、まず手軽に自分の性格傾向を知りたい初心者に最適です。結果が「個性派タイプ」「世話焼きタイプ」など分かりやすいネーミングで表現されるため、自己理解のきっかけ作りに適しています。

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市場価値・コンピテンシーを測る診断（ミイダス可能性診断、ビズリーチ診断など）

これらの診断は、あなたのビジネススキルや行動特性（コンピテンシー）を測定し、それを市場（企業）がどれだけ評価しているかを数値で把握することに特化しています。年収アップやキャリアアップを目指す方にとって、最も重要な診断群です。

4. ミイダス 可能性診断（コンピテンシー診断＋バイアス診断ゲーム）

• 診断内容：「コンピテンシー診断」（行動特性、マネジメント資質、相性の良い上司・部下）と、ユニークな「バイアス診断ゲーム」（意思決定の癖）の組み合わせです。
• 特徴と活用法：診断結果から、あなたの現時点での想定年収や企業からオファーが届く可能性が提示されます。特にバイアス診断は、自分がどのような「認知の歪み」を持っているかを知ることで、面接や業務における意思決定の改善に直結します。スカウト型の転職では必須の診断です。
• 専門的補足：ミイダスの診断結果は、単なる性格ではなく、「ストレス耐性」や「上下関係での適性」まで細かく分析します。これにより、入社後の具体的な人間関係のミスマッチを避ける指標が得られます。

5. ビズリーチ シゴト観診断（強み・価値観の他己診断機能あり）

• 診断内容：あなたの「強み・弱み」「ワークスタイル」「価値観」を可視化します。特に、**「他己診断」**機能があり、上司や同僚に回答してもらうことで、自己認識と他者からの評価のギャップを知ることができます。
• 特徴と活用法：ハイクラス転職を目指す方向けのサービスであるため、診断結果はビジネスシーンでのリーダーシップや専門性に重点を置いています。「他己診断」の結果は、自己PRの客観性を担保する強力なエビデンスになります。

6. doda 自分の市場価値診断：年収査定に直結

• 診断内容：あなたの職種、経験、スキル、希望条件を入力し、転職市場におけるあなたの現在の市場価値（想定年収）を診断します。
• 特徴と活用法：診断そのものは自己申告ベースですが、数百万件の転職データに基づいているため、現在の年収が市場価値に対して適正か、年収アップが可能かを判断するのに役立ちます。年収交渉のベースデータとして活用できます。

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強み・潜在能力に特化した診断（リクナビNEXTグッドポイント診断など）

これらの診断は、あなたの**潜在的な才能、パーソナルな強み**を発見することに焦点を当てています。「自分の何が強みなのか」「どんな能力を活かせるのか」を掘り下げたい場合に最適です。

7. リクナビNEXT グッドポイント診断：18種類から5つの強みを厳選

• 診断内容：リクルートが長年培ったノウハウを元に開発された診断で、全18種類の特徴から、あなたの強みとなる5つを厳選して提示します。
• 特徴と活用法：診断結果は「独創性」「決断力」「親密性」などポジティブなキーワードで表現され、そのまま面接での自己PRに直結する具体的な表現が得られます。特に、自己PRのエピソードが弱いと感じている人にとって、言葉の武器を与えてくれる診断です。
• 専門的補足：結果は5つの強みと、それぞれの詳細な解説文で構成されます。この解説文を、面接での回答の「核」として利用することで、説得力が格段に増します。

8. 厚生労働省 job tag（ジョブ・タグ）職業興味検査・価値観検査

• 診断内容：厚生労働省が提供する公的なツールで、あなたの興味・関心がどの職業領域にあるか、また仕事で何を重視するか（価値観）を測定します。
• 特徴と活用法：公的なデータに基づいているため信頼性が高く、営利目的の診断ツールとは異なる**中立的な視点**で適職を探せます。「公的なツール」という安心感を重視する方におすすめです。

9. ストレングス・ファインダー（クリフトンストレングス）

• 診断内容：（厳密には転職サイトではないが、極めて重要）あなたの潜在的な「才能の種」を34の資質から特定し、特に上位5つの「強みの源泉」を分析します。
• 特徴と活用法：有料（書籍購入またはコード購入）ですが、世界中で広く利用されており、圧倒的な信頼性を誇ります。診断結果は転職活動だけでなく、長期的なキャリアやリーダーシップ開発にも応用可能です。「真の自分を知りたい」と考える人は、必ず受けるべき診断です。

10. 16Personalities 性格診断テスト（16TEST）

• 診断内容：（厳密には転職サイトではないが、汎用性が高い）MBTI（Myers-Briggs Type Indicator）をベースとした16種類の性格タイプに分類し、あなたの特性、人間関係、キャリアへの適性を詳細に解説します。
• 特徴と活用法：視覚的で分かりやすく、結果がSNSなどで共有しやすいことから人気があります。自分の「思考パターン」や「チーム内での役割」を理解するのに役立ち、企業選びや職種選びの「大まかな方向性」を見定めるのに適しています。

これらの診断ツールは、それぞれ切り口が異なります。理想的な活用法は、「複数の診断を組み合わせて、多角的に自己を分析する」ことです。次章では、これらの診断結果を具体的な転職活動にどう活かすかのステップを解説します。

診断結果を「転職の成功」に繋げるための具体的活用ステップ

前セクションでは、目的別の主要な診断ツールを紹介しました。重要なのは、これらの診断を「受けたこと」ではなく、「結果をどう使いこなすか」です。診断結果を単なる紙切れ（デジタルデータ）で終わらせず、内定獲得という成功に結びつけるためには、明確なワークフローが必要です。

ここでは、診断結果を自己分析から選考対策まで応用するための、実践的な3つのステップを解説します。

ステップ1：診断結果を鵜呑みにせず「違和感」を分析する（真の自己理解）

診断結果が出たら、すぐに「これが自分だ」と断定してはいけません。結果を客観的に見つめ、「納得できる点」と「違和感がある点」を冷静に分離することが、真の自己理解の第一歩です。

「納得できる点」：自信を持ってアピールするための裏付けとする

結果の中で「確かにそうだ」「昔から人によく言われる」と感じる部分は、あなたの確固たる強みや価値観です。これをベースとして、転職活動の中心軸に据えます。

• リクナビNEXTで「独創性」が出た → 過去の仕事で、あなたが発揮した具体的なアイデアや、非伝統的な解決策を導いたエピソードを3つ用意する。
• dodaで「安定志向」が出た → 転職先に求める条件として、「経営基盤の安定性」「長期的なキャリアパス」を明確に言語化する。

ポイント：複数の診断で共通して示された強みは、あなたの「核」となる特性です。これは面接での自信に直結します。

「違和感がある点」：「潜在的な自分」と「理想的な自分」のギャップを分析する

もし結果に「これは自分ではない」と感じる部分があったとしても、それを無視してはいけません。この「違和感」こそが、あなたの「潜在的な可能性」や、「自己評価のズレ」を示している可能性が高いからです。

診断結果	あなたの主観	分析される「違和感」の正体
「リーダーシップ」が非常に高い	「自分はサポート役が向いている」	現状：過去の環境がリーダーシップを発揮させなかった。可能性：潜在的にはチームを引っ張る資質がある。
「協調性」が低い	「自分はチームワークを大切にしている」	現状：チームワークを意識的に努力しているが、根本的な思考は個人主義。リスク：集団行動が多い職場だとストレスを感じやすい。

真の自己理解：違和感を分析することで、あなたが「目指している自分（理想）」と「診断が示す自然な自分（現実）」の境界線が明確になり、「入社後に無理なく働ける環境」のイメージが具体化します。

ステップ2：結果を元に「転職の軸」「企業選びの基準」を明確化する

診断結果を具体的な「行動指針」に変えるプロセスです。自己理解を深めたら、ブレない転職活動を行うために「3つのフィルタリング基準」を確立します。

フィルタリング基準1：仕事の価値観（最優先事項）

dodaやマイナビの診断結果から、あなたが仕事で最も満たしたい欲求（報酬、安定、成長、ワークライフバランスなど）を2〜3つに絞ります。

• 例：「成長志向」が突出 → 転職の軸：教育制度が充実している、新規事業立ち上げフェーズである、裁量権が大きいベンチャー企業を選ぶ。
• 例：「安定志向」が突出 → 転職の軸：福利厚生が手厚い、上場企業である、ニッチトップの専門性を持つ老舗企業を選ぶ。

この基準が、求人検索や応募先決定の際の「一次スクリーニング」となります。価値観が満たされないと、どんなに良い条件でも早期離職につながります。

フィルタリング基準2：強みが活かせる職務環境（適職の選定）

リクナビNEXTやミイダスの診断で判明した強みが、最大限に発揮できる職種や企業規模を特定します。

• 「企画力」「独創性」が強み → 職務環境：ルーティンワークの少ない企画職、マーケティング職、またはR&D部門。
• 「協調性」「傾聴力」が強み → 職務環境：チーム体制が確立された営業、カスタマーサポート、人事など、対人折衝が中心の仕事。

これにより、あなたのパフォーマンスが最大化する環境に狙いを定めることができます。

フィルタリング基準3：ストレス耐性・相性の良い組織文化（ミスマッチの回避）

ミイダスのコンピテンシー診断などで明らかになった「ストレス耐性」や「相性の良い上司のタイプ」を、企業文化や組織風土のチェックリストとして利用します。

具体例：診断結果が「ストレス耐性が低い」と示された場合、転職先の企業情報を見る際、単に「残業時間」だけでなく、「急な方針転換が多いか」「トップダウン型かボトムアップ型か」「社内での競争が激しいか」といった組織文化の側面を深く質問するようにします。これにより、入社後の心理的な負荷を予測できます。

この3つの基準をクリアした企業だけを次のステップ（応募・面接）に進めることで、転職活動全体の効率と成功率が飛躍的に向上します。

ステップ3：診断結果で示された強みを具体的なエピソードに落とし込み言語化する

自己分析と軸の確立が終われば、いよいよ「選考対策」です。診断結果は、あなたの強みを裏付ける「客観的エビデンス」であり、これを面接官に伝えるための「物語」へと変換します。

STEP 3-1: 診断キーワードと過去の経験の紐付け（STAR法を活用）

診断結果から最も強く出た強み（例：目標志向性、課題発見力）を選び、その強みが発揮された過去の具体的なエピソードを、STAR法（Situation, Task, Action, Result）のフレームワークに沿って整理します。

要素	目的（フレームワーク）	診断キーワードの活用例
S (状況)	どんな状況で課題が発生したか	前職の○○プロジェクトで、前例のない目標が設定された（目標志向性を試される状況）。
T (課題)	解決すべき具体的なタスクや目標	達成率は20%に留まっていた。目標達成に向けた施策の立案が必要だった。
A (行動)	あなたが行った具体的な行動	リクナビNEXTで示された「課題発見力」に基づき、メンバーへの徹底的なヒアリングを行い、真の問題はモチベーションにあると特定した。
R (結果)	その行動によって得られた具体的な成果	結果、チームの士気が向上し、目標達成率を85%まで引き上げることができた。

STEP 3-2: 専門用語（キーワード）を会話のフックとして使用する

面接では、「私の強みは〇〇診断で示された『戦略的思考力』です」と**客観的なデータを最初に提示**することで、面接官の注意を引きつけ、話の信憑性を高めることができます。

面接官はあなたの診断結果を把握していないため、「診断結果」という言葉が「この人は自己分析を深く行っている」という強い印象を与えるフックとして機能します。その上で、STAR法に基づいた具体的なエピソードを語ることで、抽象的な言葉に生命を吹き込むことができます。

このプロセスを踏むことで、あなたは単なる「熱意のある応募者」から、「データに基づき自己を理解し、再現性のある成果を出せるビジネスパーソン」へと評価を引き上げることができるのです。

【実践】選考突破のための「適性検査」対策と本番での心構え

前章までは、自己理解を深め、転職の軸を定めるための**「適性診断ツール（主に性格・価値観を測るもの）」**の活用法を解説しました。しかし、実際の転職活動の選考プロセスでは、もう一つの重要な関門があります。それが、企業が合否判定の材料とする**「適性検査」（SPI、玉手箱、Webテスティングなど）**です。

このセクションでは、転職サイトの診断とは目的も対策法も異なる、選考用の適性検査を突破するための実践的な知識と戦略を網羅的に解説します。

企業が選考で適性検査を実施する真の目的とは？（性格と能力）

企業が時間とコストをかけてまで適性検査を実施するのは、単に学力を測るためではありません。面接だけでは見抜けない、応募者の「潜在的なリスク」と「基礎的な地頭」を客観的なデータで把握することが真の目的です。

目的1：入社後の定着率と組織とのマッチ度を測る（性格検査）

適性検査の「性格検査」は、応募者が「企業文化や職務内容に馴染めるか」、また「ストレスで早期離職しないか」を判断するために使われます。

• リスクヘッジ：企業が最も避けたいのは、採用後のミスマッチによる早期離職です。性格検査で、企業が求める人物像（例：外向性、チーム志向、慎重性など）と大きくかけ離れていないかを確認します。
• 虚偽回答のチェック：多くの性格検査には「ライ・スケール（虚偽尺度）」が組み込まれており、自分を良く見せようとする回答傾向を検出します。これにより、面接での自己PRの信憑性を裏付けたり、逆に回答の矛盾点を洗い出したりします。

目的2：仕事の基礎能力と潜在的な伸びしろを測る（能力検査）

「能力検査」（言語・非言語など）は、職務経験や学歴に関わらず、「業務遂行に必要な最低限の基礎学力と論理的思考力があるか」を測ります。

• 基礎能力の担保：特に未経験職種への転職の場合、職務経験がない分、この基礎能力のスコアが非常に重要になります。スコアが高いほど、「新しい知識やスキルを速く習得できる潜在能力がある」と評価されます。
• 足切りラインの設定：大手企業や人気企業では、選考の初期段階で大量の応募者を効率的に絞り込むための**「足切りライン」**として能力検査が使われます。このラインをクリアできなければ、どれだけ素晴らしい職務経歴があっても面接に進めません。

適性診断ツールとの決定的な違い

転職サイトの無料診断が「あなた自身のための自己理解」を目的とするのに対し、選考用の適性検査は「企業のための採用判断」を目的としています。後者は合格/不合格という明確な評価が下されるため、対策が必須となります。

能力検査（非言語・言語）の効率的な勉強法と時間配分のコツ

能力検査は、一夜漬けで対応できるものではありませんが、出題傾向に合わせた効率的な対策を行うことで、短期間でスコアを大幅に改善することが可能です。

対策ステップ1：出題形式の特定と過去問の分析

転職で最も採用される適性検査は**SPI**、次に**玉手箱**や**TG-WEB**です。応募企業がどの形式を採用しているかを、転職エージェントや口コミサイトで事前に確認します。形式が異なると出題傾向が全く違うため、闇雲に勉強するのは非効率です。

• SPI対策：非言語は「推論」「割合と比」「損益算」など、中学〜高校レベルの数学が中心。言語は「二語の関係」「語句の用法」など。対策本を最低1冊は3周以上解き込み、解法パターンを完全に記憶します。
• 玉手箱対策：計数は「四則逆算」「表の読み取り」「図表の推論」が中心で、計算スピードと情報処理能力が問われます。言語は「論理的読解（GAB形式）」が特徴的です。特に時間が厳しく、速読力と瞬発的な判断力が必要です。

対策ステップ2：最重要分野への集中と「解法の暗記」

能力検査は知識問題ではなく、「短時間でパターン認識と処理ができるか」を測るテストです。全分野を完璧にするのではなく、出題頻度の高い重要分野に集中し、「解法を理解する」のではなく「解法を暗記する」意識で臨みます。

非言語の鉄則：「推論」や「表の読み取り」など、時間がかかる問題を優先して対策します。特にWebテストでは、過去に同じ形式の問題が出題された場合、解答パターンを覚えておくだけで時間短縮に繋がります。

言語の鉄則：語彙力が問われる問題は、専用の単語帳で対策。長文読解は、設問を先に読み、どこに注目すべきかを把握してから本文を読む**「クイックリーディング」**の練習を徹底します。

本番での時間配分のコツ（Webテストの場合）

Webテストは一問あたりの制限時間が極めて短いため、時間配分が合否を分けます。

1. **全問正解を目指さない：**一般的に、能力検査の合格ラインは企業によりますが、**正答率7割程度**が一つの目安です。解けない問題に固執せず、潔く次の問題に進む「見切る力」が重要です。
2. **1問あたりの時間を厳守：**例えば玉手箱の計数（表の読み取り）は、1セット（数問）を数分で処理する必要があります。時間が過ぎたら諦めるルールを事前に設定し、確実に解ける問題を増やすことに注力します。
3. **電卓の活用：**Webテスト形式の場合、電卓の使用が許可されていることが多いため、計算力を頼りにせず、電卓を最速で叩けるよう慣れておきます。

性格検査で「正直に回答すべきか否か」の判断基準と注意点

選考用の「性格検査」は、応募者にとって最も悩ましい部分です。「正直に答えて落ちたらどうしよう」「企業が求める人物像を演じるべきか」という疑問に答えます。

基本原則：一貫性と「企業文化」とのわずかな調整

結論として、**基本的に正直に回答すべき**です。しかし、企業の求める人物像との「致命的なミスマッチ」を避けるため、一定の調整は必要です。

• **正直さが最も重要：**性格検査は、回答の一貫性や、極端な回答がないかを細かくチェックしています。**嘘をつくと、回答に一貫性がなくなり「虚偽傾向あり」と判定され、逆に不合格となるリスクが高まります。**
• **致命的なミスマッチを避ける微調整：**例えば、企業が「チームワークと協調性」を非常に重視している場合、あなた自身の性格が「単独行動を好む」としても、「チームメンバーとの交流も大切だと考えている」など、許容範囲内で回答をわずかに調整することは有効です。

性格検査で「落とされる」典型的なNGパターン

企業が最も懸念するのは、入社後に組織を乱したり、メンタル不調に陥ったりする可能性です。以下の特性は、スコアが極端に高い・低い場合にNGと判定されがちです。

特性	NGな傾向	企業が抱くリスク懸念
精神的安定性	極端に低い	ストレス耐性が低く、早期離職やメンタル不調のリスクが高い。
規範意識・誠実性	極端に低い	ルールや指示を守らない、倫理観に欠ける行動を取る可能性。
協調性	極端に低い（組織重視の企業）	チームワークを乱し、円滑な人間関係を築けない。
虚偽尺度（ライ・スケール）	極端に高い	回答が信用できず、面接での情報も疑わしいと判断される。

注意点：「完璧な人物」を演じようとすると、この「虚偽尺度」が跳ね上がり、むしろ信用を失います。自身の性格特性に基づき、**「この企業の文化と致命的に衝突しないライン」**を見極めることが、性格検査突破の鍵です。

診断結果を活用した面接・履歴書での効果的なアピール戦略

これまでの章で、あなたは転職サイトの診断ツールを利用して、**「客観的な自己理解」**と**「ブレない転職の軸」**、そして選考を通過するための**「適性検査対策」**を習得しました。

この最終セクションは、これまでの全ての努力を内定獲得という結果に結びつけるための、「応用編」です。診断で得られた客観的なデータ（強み、価値観、特性）を、応募書類や面接での自己PRに組み込み、採用担当者の評価を飛躍的に高めるための、具体的なテクニックを解説します。

「あなたの強みは？」に対し、診断結果のキーワードを組み込む方法

面接で最も頻出する質問である「あなたの強みは何ですか？」に対して、診断結果を組み込むことで、回答の「客観性」「説得力」「専門性」の三要素が劇的に向上します。これは、あなたの言葉を**「自己申告」**から**「データに裏打ちされた事実」**へと昇華させる戦略です。

テクニック1：冒頭に「客観性」を提示し、注意を惹きつける「ダブルフック戦略」

単に「私の強みは粘り強さです」と始めるのではなく、診断名を冒頭に含めることで、面接官の注意を一瞬で惹きつけます。

「はい、私の最も大きな強みは、リクナビNEXTの『グッドポイント診断』で上位5つに選ばれた『決断力』と、ミイダスの『コンピテンシー診断』で突出した『実行力』の組み合わせです。この強みは、過去（具体的な状況）において、他者が躊躇する中で迅速に意思決定を行い、結果を出す原動力となりました。」

この戦略のメリットは以下の通りです。

• 権威性の利用：大手サービスや専門的な診断名を用いることで、その場で言葉に**「客観的な裏付け」**という権威性が加わります。
• 面接官の負担軽減：面接官は、あなたの性格特性をゼロから見抜く必要がなくなり、「データ通りだな」と納得感を持って話を聞き進めることができます。
• 一貫性の強調：自己分析ツールの結果と、あなたが語るエピソードに一貫性があることを示すことで、信頼性が高まります。

テクニック2：診断キーワードを「ビジネス用語」に変換し、職務に繋げる

診断結果のキーワードは、そのままでは抽象的な場合があります（例：「親密性」「社交性」など）。これらを応募職種で求められる「コンピテンシー（職務遂行能力）」に変換し、具体的な成果と結びつけることが重要です。

診断キーワードの例	変換後のビジネス用語	適用職種の例
親密性、共感性	傾聴力、関係構築力	営業、人事、カスタマーサポート
独創性、発想力	課題発見力、イノベーション志向	企画、R&D、マーケティング
慎重性、完璧志向	リスクマネジメント能力、品質担保能力	経理、法務、生産管理

履歴書や職務経歴書の「自己PR欄」では、この変換後のビジネス用語を太字にし、その後ろに「診断で裏付けられた」という文脈を添えることで、書類の説得力が増します。

診断結果と企業理念の共通点を語り、入社意欲とマッチ度を強調する

面接官が最も知りたいことの一つは、「あなたがうちの会社にどれだけフィットするか（カルチャーマッチ）」です。診断で得られた「価値観」や「仕事への欲求」を、応募企業の「企業理念」「ミッション」「行動指針」と意図的に結びつけることで、入社意欲とマッチ度の高さを同時にアピールできます。

戦略3：「理念の共鳴」を具体的なエピソードで示す

単に「御社の理念に共感しました」と述べるだけでは不十分です。あなたの診断結果から得られた「動機づけ要因（モチベーションファクター）」と、企業の理念を紐付けます。

「dodaの転職タイプ診断で、私は『成長と挑戦』を最優先するタイプと明確に示されました。御社の『常に業界の常識を打ち破るイノベーションを追求する』というミッションは、まさに私のこの特性と完全に共鳴しています。前職で（具体的な挑戦のエピソード）を経験した際も、この挑戦意欲が原動力となっており、御社の環境であれば、私は最高のパフォーマンスを発揮し続けられると確信しています。」

このように語ることで、面接官は以下の評価を下します。

1. **自己分析の深さ：**自身の価値観を明確に言語化できている。
2. **企業理解の深さ：**企業のミッションを深く理解している。
3. **高い定着可能性：**入社後の働き方が個人の価値観と一致しているため、モチベーションが維持され、早期離職のリスクが低い。

特に、ミイダスなどで測定される「相性の良い上司・部下のタイプ」や「ストレス耐性」の結果を、**企業の組織図や人間関係の傾向**と照らし合わせ、その環境が自分にとって最適である理由を語ることは、ミスマッチ回避への真剣な姿勢として高く評価されます。

診断結果から判明した「弱み」を成長意欲とセットでポジティブに伝える技術

面接で「あなたの弱みは？」と聞かれた際、「弱みは（診断結果で出た）〇〇です」と答えることは、正直であると同時に**「自己を客観視できている」**ことの証明になります。しかし、弱みをただ述べるだけでは、評価が下がります。弱みを**「成長の種」**としてポジティブに転換する技術が必要です。

テクニック4：弱みを「裏返し」て強みとして再定義する（コインの裏表戦略）

診断結果で低く出た特性は、必ずその裏側に、高く評価されるべき別の特性を内包しています。この「コインの裏表」をセットで伝えます。

診断結果の「弱み」	裏返しの「強み」として伝える	具体的な「改善策/行動」
協調性が低い（単独行動を好む）	周囲に流されない「強い主体性」と「迅速な意思決定力」	現在は、意思決定前に必ず主要関係者2名にインプットを求める「二重承認プロセス」を習慣化しています。
完璧主義（スピードが遅くなりがち）	仕事に対する「品質への絶対的なこだわり」と「リスクの徹底排除」	タスクを「品質優先」「スピード優先」の二段階に分類し、後者にはあえて制限時間を設ける「時間的制約トレーニング」を実践中です。
慎重性が低い（即行動してしまう）	「高い実行力」と「恐れないチャレンジ精神」	重大な施策前には、必ず事前に**「チェックリスト（ミイダスの診断でリスクとされた項目）」**を第三者に見てもらうルールを設けています。

テクニック5：弱みと「入社後の貢献意欲」を結びつける

弱みを語る際の最高の締めくくりは、「その弱みを克服することで、御社にどう貢献したいか」という未来志向の表明です。

「私の弱みは、診断結果でも示された通り、時に『内向性』が強く出てしまい、自分から大勢に積極的に意見を伝えられない点です。しかし、裏を返せば深く考え抜く『分析力』に繋がります。入社後は、この分析力を活かしつつも、御社が推進する（具体的なプロジェクト名）において、自分の意見を必ず会議の冒頭で発言するなど、チームに多様な視点を提供できるよう改善に取り組み、貢献していきたいと考えています。」

このように、診断結果を自己PRのエビデンスとして活用することで、あなたは「自己分析が浅い応募者」ではなく、**「客観的なデータに基づき、自己成長への意欲を持つ、論理的なビジネスパーソン」**として、採用担当者に極めて高い評価を与えることができるのです。診断ツールは、単なる自己分析ではなく、「内定を引き寄せるための、客観的証拠の武器」として最大限に活用すべきです。

知っておくべき適性診断ツールの「限界」と注意点

これまで、転職サイトの適性診断を自己理解や選考突破の強力なツールとして活用する方法を解説してきました。しかし、どんなに優れたツールにも限界があります。診断結果を過信したり、誤った使い方をしたりすると、かえって転職活動の停滞や、入社後の深刻なミスマッチという大きなリスクを招きます。

このセクションでは、無料診断ツールを利用する上で、プロのキャリアアドバイザーが必ず警鐘を鳴らす、その**「客観性の限界」**と**「活用上の最大の注意点」**について、深く掘り下げて解説します。

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診断結果はあくまで「ヒント」。全てを決定するものではない

適性診断の結果は、あなたの行動特性や価値観を統計的に示した「高精度な仮説」であり、「絶対的な事実」ではありません。この診断結果を絶対視しすぎると、自己の可能性を狭め、かえって転職の選択肢を失うことになります。

限界1：自己評価が反映された「主観的な客観データ」である

多くの適性診断は、質問に対するあなたの回答（自己評価）に基づいてスコアリングされます。もしあなたが自分自身を過大評価したり、理想的な人物像を意識して回答したりすれば、結果は「あなたがなりたい自分」であって、「現実のあなた」とはかけ離れてしまいます。

心理学においては、人は自分の能力や性格を客観的に評価することが苦手であるとされています（例：自己奉仕バイアス）。診断結果を鵜呑みにせず、必ず以下のような多角的な検証作業が必要です。

• **過去の行動との照合:** 診断結果の「強み」が、過去の仕事やプライベートで具体的な成果や行動として裏付けられているか？
• **他者評価との比較:** 家族、友人、前職の上司や同僚からの「他己分析」（次章で詳しく解説）と比べて、大きなズレがないか？

診断結果は、あなたが自分を語るための「言葉の武器」を提供するものであり、あなたの能力の「天井」を定めるものではないと理解してください。

限界2：「成長・環境による変化」を考慮できない

適性診断は、原則として「今の時点でのあなた」の特性を測定するものです。人間の特性や価値観は、経験や環境、そして年齢とともに変化する流動的なものです。

特性	変化の要因	陥りやすい誤解
ストレス耐性	前職での過度な残業や人間関係の悪化	「自分はストレスに弱い」と決めつけ、挑戦的な環境を避けてしまう。
協調性	前職が個人主義的な環境だった	「自分はチームワークが苦手」と決めつけ、協調性を重視する優良企業を避けてしまう。

診断結果が低く出た特性であっても、それは単に「前職の環境下ではその特性が発揮されなかった、あるいは疲弊した」だけかもしれません。新しい環境でなら、あなたの潜在能力が開花する可能性を否定してはいけません。

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回答を偽ることで生じる「入社後のミスマッチ」という最大のリスク

転職サイトの診断ツールは選考で使われないことが大半ですが、もしあなたが「より良い求人を紹介してもらうため」「自分を良く見せるため」に、意図的に回答を偽った場合、その代償は極めて大きくなります。

ミスマッチの悪循環：虚偽回答による「自己欺瞞」の危険性

入社後のミスマッチは、転職活動における**最大のリスク**です。診断結果を偽る行為は、このリスクを自ら高める行為に他なりません。

1. **虚偽のインプット:** あなたが「成長意欲が高い」と偽って回答する。
2. **誤ったレコメンド:** 診断システムが、あなたの虚偽の回答に基づき、「成長スピードが速く、常に新しい目標を追うベンチャー企業」をレコメンドする。
3. **入社後の現実:** 実際には「安定」を求めるあなたが、激しい競争と変化の環境に置かれ、数ヶ月で精神的に疲弊し、早期離職に至る。

本来、診断ツールの最大のメリットは「ミスマッチの防止」にあるにもかかわらず、回答を偽ることで、そのメリットを完全に打ち消してしまいます。早期離職は、あなたのキャリアに新たなブランクを作るだけでなく、次の転職活動で「なぜ短期間で辞めたのか」という致命的な疑問を面接官に与えることになります。

倫理的・心理的なコストの増大

また、診断結果を偽ることは、キャリアの倫理的な問題にも繋がります。

• **自己認識の歪み:** 偽りの回答を繰り返すことで、自分自身の真の強みや弱みが分からなくなり、「自己分析の迷子」に陥ります。
• **ストレスの増大:** 企業が求める「理想の自分」を演じながら働くことは、極度の心理的なストレスを生みます。これは、適応障害や燃え尽き症候群（バーンアウト）の原因となり得ます。

原則：企業が求める人物像を理解しつつも、診断では**「正直に、ありのままの自分」**を回答し、その結果を活用して「素の自分」が最も輝ける企業を見つけ出すことに注力すべきです。

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複数診断の「結果のズレ」をどう解釈し、最終的な結論を出すべきか

リクナビNEXT、doda、ミイダスなど、複数の診断ツールを利用した場合、結果が微妙に異なることはよくあります。これは診断ロジックや測定する心理尺度が異なるためであり、異常ではありません。重要なのは、この「ズレ」をどう分析し、「あなたの転職における最終結論」を導き出すかです。

ステップ1：結果の「共通項」を見つけ、「核」となる特性を特定する

まず、複数の診断結果を一覧で並べ、共通して高いスコアが出ている特性や、同じような価値観を示しているキーワードを抽出します。

診断ツール	上位特性（強み）	仕事の価値観
リクナビNEXT	決断力、目標志向性	成長、自己実現
doda	統率力、実行力	達成欲求、裁量権重視
ミイダス	リーダーシップ、率先力	競争、結果重視

共通項の特定：この例では、「決断力」「目標志向性」「リーダーシップ」「実行力」が共通しており、これらを統合した「高い目標を自力で設定し、周囲を巻き込みながら推進する力」があなたの核となる強みであると結論付けられます。

ステップ2：ズレている部分を「視点の違い」として解釈する

ズレている部分は、「嘘や誤り」ではなく、単に「診断ツールの視点が異なる」と解釈します。これにより、あなたの特性をより立体的に捉えられます。

• **例：「論理的思考力」**がA診断では高いが、B診断では普通。

  → 解釈：A診断は「課題解決のプロセス」を重視し、B診断は「アウトプットの簡潔さ」を重視する。あなたは**複雑な課題を深く掘り下げるのは得意だが、それを即座に分かりやすく伝えるのは苦手**、という特性の輪郭が浮かび上がります。

• **例：「安定志向」**がdodaでは高いが、マイナビでは低い。

  → 解釈：dodaは「組織の安定性」を、マイナビは「仕事内容の安定性」を測っている可能性がある。あなたは**会社は安定しているほうが良いが、仕事内容は常に新しいことに挑戦したい**、という複合的な価値観を持っていると特定できます。

最終結論：統合された「自分だけのパーソナリティ」の定義

これらの共通項とズレを全て統合し、最終的に「私は○○診断でも裏付けられた、××という強みを持ち、△△という価値観を最優先するため、入社後は☆☆という企業で貢献したい」という、一貫した自己理解のステートメントを作成します。

この統合的な結論こそが、あなたのブレない転職軸となり、面接官を納得させる最強の自己PRの土台となります。診断は、あくまで自己理解という旅の「地図」にすぎません。最終的に、どの道を進むかを決めるのは、あなた自身の深い考察と行動力なのです。

自己理解を深めるための「診断ツール以外の」補完的な自己分析法

これまでの章で、転職サイトの適性診断ツールを最大限に活用し、自己理解を深める方法と、その結果を面接や選考対策に繋げる戦略を解説しました。しかし、診断ツールはあくまで「初期段階の客観的な羅針盤」です。

真に深く、網羅的な自己分析を達成し、「診断結果さえも超える自分だけの強み・価値観」を発見するためには、診断ツールに頼らない、より実践的で泥臭い補完的な手法が必要です。このセクションでは、その具体的な手法を、公的ツールから他者からの視点に至るまで、徹底的に深掘りして紹介します。

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自分の価値観・興味を可視化する厚生労働省提供の「Job Tag」の活用

民間企業の診断ツールが、主に「転職のしやすさ」や「職務適性」に焦点を当てるのに対し、厚生労働省が提供する「Job Tag（ジョブ・タグ）」は、職業情報提供サイト（日本版O-NET）の一部として、中立的かつ公的な視点からあなたの「職業興味」と「価値観」を測定します。

Job Tagの検査の特徴と信頼性

• 公的機関による中立性: 営利目的の企業診断とは異なり、特定の求人への誘導がないため、純粋な自己理解を目的とできます。
• 検査の構成:
  • 職業興味検査: 6つの興味領域（例：リアリティック、探究的、社会的など）のどれに強い関心があるかを測定し、具体的な職種へ結びつけます。
  • 価値観検査: 仕事に求める報酬、安定、創造性、人間関係などの「重要度」を測定します。
• 情報量の豊富さ: 診断結果と紐づく形で、その職業の平均賃金、必要なスキル、キャリアパス、将来性といった具体的な「職業情報」をワンストップで確認できる点が最大の強みです。

Job Tagの具体的な活用ステップ

診断結果を民間ツールの結果と照合することで、あなたの「真の欲求」を浮き彫りにできます。

1. **民間診断との比較:** ddoaやリクナビNEXTの結果で「挑戦志向」が高く出たが、Job Tagの「価値観検査」で「安定志向」も同程度に高いと出た場合、「新しいことへの挑戦はしたいが、経営基盤の安定した大手企業で実現したい」という、より具体的で矛盾のない転職の軸が導き出されます。
2. **未検討職種への挑戦:** 興味検査で、これまで一度も考えたことのない職種に高い適性が示された場合、Job Tag内の詳細情報（賃金、必要スキルなど）を参考に、その職種をキャリアチェンジの選択肢として本格的に検討できます。

特に、転職先で何を実現したいかの「価値観」がまだ曖昧な段階で、Job Tagの中立的なデータは非常に大きな役割を果たします。

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ジョブ・カード作成を通じたキャリアの棚卸しと行動計画の立案

ジョブ・カードは、厚生労働省が定める様式で、個人の職務経歴、学習歴、職業能力を体系的に記録・整理するためのツールです。これは単なる履歴書ではなく、キャリアコンサルティングの基礎資料として活用される、**自己分析の「最終文書」**と言えます。

ジョブ・カード作成の自己分析における本質的な価値

民間診断が「性格」や「価値観」という内面を測るのに対し、ジョブ・カード作成は、あなたの「過去の具体的な行動と結果」から、あなたのスキルと強みを言語化する、極めて実践的な手法です。

• **職務経歴の「深掘り」:** 「いつ」「どこで」「何を」「どうしたか」を時系列で詳細に記述する過程で、単なる業務内容ではなく、「その時、自分がどのような課題を解決し、どんなスキルを発揮したか」という**成果の源泉（コンピテンシー）**を明確にできます。
• **強みの「抽出と構造化」:** 各職務で得られた知識・技能、及び能力を洗い出し、それらが新しい仕事でどう活かせるかを具体的に言語化します。これにより、「過去の経験から得た強み」と「診断結果の特性」が結びつき、説得力のある自己PRの骨子が出来上がります。
• **キャリアプランの「立案と検証」:** 最終的に、「目標とする職業」と「それを達成するための行動計画」を明確に記述します。これは、転職の軸が定まっているかを検証し、不足しているスキルを洗い出すための**セルフ・チェック機能**を果たします。

ジョブ・カード作成を通じた具体的なアウトプット

ジョブ・カードで整理された情報は、そのまま転職活動で利用できる具体的な文章となります。

ジョブ・カードの項目	転職活動での活用先
職務経歴の要約・具体的な成果	職務経歴書の骨子、面接でのSTAR法エピソード
職業能力の「自己評価」欄	面接での「あなたの強み・スキル」に対する回答の裏付け
キャリアプラン・行動計画	面接での「5年後の目標」に対する説得力ある回答

診断結果が抽象的なキーワードであるのに対し、ジョブ・カードは「〇〇プロジェクトで売上を〇〇%向上させた」といった具体的な「数値と成果」を提供するため、履歴書・職務経歴書・面接全てにおいて、説得力を飛躍的に高めることができます。多くの転職成功者は、このジョブ・カードに類似した体系的な棚卸しを行っています。

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「他己分析」で自分では気づかない強み・弱みを客観視する方法

自己分析の限界は、常に**「主観の壁」**が存在することです。リクナビNEXTやdodaの診断結果でさえ、あなたの主観的な回答に大きく依存しています。この壁を打ち破る最も強力な手法が、**「他己分析（たこぶんせき）」**です。

他己分析の心理学的根拠と効果

他己分析は、あなたの**「盲点の窓（他人は知っているが、自分は知らない特性）」**を開くための手法です。これにより、自分では当たり前すぎて強みと認識していなかった行動や、無意識に避けている弱みを発見できます。

• **認知のギャップの解消:** 心理学では、人は自分の弱みを過小評価し、強みを過大評価する傾向があることが示されています（セルフ・サービング・バイアス）。他己分析は、この認知のズレを強制的に修正し、より現実的で客観的な自己像を形成します。
• **「再現性の高い強み」の発見:** 同僚や上司から「いつも〇〇の時に、あなたの行動に助けられた」と言われたことは、**職場で普遍的に通用する再現性の高い強み**です。これは、面接官が最も知りたい「入社後に会社に利益をもたらす能力」そのものです。

他己分析の具体的な依頼先と質問項目

他己分析は、信頼できる人に対して**具体的かつオープンな質問**で依頼することが重要です。漠然とした質問では、あいまいな答えしか返ってきません。

依頼相手	引き出せる情報（視点）	質問例（具体的な行動を促す）
現・元上司	マネジメント視点での客観的評価、成長・課題	「私が最もチームに貢献した、具体的なエピソードを一つ教えてください。」「私に任せるのをためらう仕事は何でしたか？」
同僚・部下	チーム内での役割、人間関係、日々の行動特性	「私が無意識にやっていることで、チームの役に立っていることは何ですか？」「逆に、私の行動でイラッとしたことはありますか？」
友人・家族	プライベートでの価値観、ストレスへの対処法	「私が何かを決断するとき、何を最も重視していると思う？」「疲れているとき、私にどんな癖が出ますか？」

他己分析結果の統合と活用

得られた他己分析の結果は、以下のステップで既存の診断結果と統合します。

1. **一貫性の検証:** 他己分析で得られた強みが、リクナビNEXTの「グッドポイント」やミイダスの「コンピテンシー」と一致しているか確認します。一致していれば、それは**あなたの揺るぎない「核」となる強み**であり、面接で最もアピールすべき材料となります。
2. **弱みの受け入れと改善策の追加:** 他己分析で指摘された弱みが、診断結果の「低い特性」と一致した場合、それは改善必須の課題です。これを放置せず、ジョブ・カードの「行動計画」欄に**具体的な改善策（例：上司に相談、〇〇スキルを学習）**として明記することで、面接で「弱みを理解し、成長意欲を持つ人物」と評価されます。

診断ツール、ジョブ・カード、他己分析という「三種の神器」を組み合わせることで、あなたは自己理解の精度を飛躍的に高め、入社後のミスマッチを限りなくゼロに近づけることが可能になります。