「内定をもらって安心したけれど、この『入社承諾書』って何を書けばいいの?」
「『内定誓約書』って書いてあるけど、これにサインしたら本当に辞退できなくなるの?」「添え状や封筒の書き方にもマナーがあるらしいけど、間違えたら印象が悪くなる?」
おめでとうございます! 転職活動を成功させ、内定を勝ち取ったあなたは本当に素晴らしいです。しかし、最後の関門である「内定後の手続き」で戸惑う方は非常に多いです。特に入社承諾書(内定誓約書)は、単なる事務手続きではなく、あなたの入社意思を最終的に確認する重要な書類であり、書き方や提出マナーを間違えると、入社前の印象を悪くしたり、思わぬトラブルに巻き込まれたりするリスクがあります。
この記事は、こんな悩みを解決するために書きました。
- 入社承諾書、内定誓約書、内定承諾書の違いがわからず、どれが重要な書類なのか知りたい。
- 正しい書き方(日付、捺印、保証人欄など)を、ミスなく完璧に確認したい。
- 「内定辞退の法的効力」や「内定取り消し」のリスクについて、法的な視点から正確に理解したい。
- 添え状や封筒の書き方、郵送方法など、ビジネスマナーを完璧にして好印象を与えたい。
- もし内定を保留・辞退する場合、角を立てずに伝えるための例文が欲しい。
この記事は、転職先の企業に提出する「入社承諾書・誓約書」に関する疑問を、すべて解消するための【完全ガイド】です。
「入社承諾書とは何か?法的効力は?」といった基礎知識から始まり、「正しい書き方と記入時の注意点(実例つき)」、さらに見落としがちな「誓約事項に潜むリスク」や「完璧な提出マナー」まで、プロセスを追って網羅的に解説しています。
この記事を最後まで読めば、あなたは入社承諾書に関する不安から完全に解放され、自信を持って書類を提出し、転職先の企業に「信頼できる人」という第一印象を与えることができます。
新しいキャリアを気持ちよくスタートさせるために、早速、一緒に重要な手続きのポイントを確認していきましょう。
入社承諾書・誓約書とは?法的定義と書類の役割を理解する
入社承諾書は、内定者が企業に対して「内定を承諾し、定めの期日に入社します」という意思を正式に表明するための文書です。企業側にとっては、内定辞退のリスクを軽減し、入社人数を確定させるための重要な手続きとなります。
しかし、転職者はこの書類について、その名称や法的な効力に関して多くの疑問を抱えています。この章では、入社承諾書をめぐる基本的な知識と、その裏にある法的な位置づけについて詳細に解説します。
「入社承諾書」「内定承諾書」「入社誓約書」の違いと共通点
企業から送られてくる書類には、「入社承諾書」「内定承諾書」「入社誓約書」「内定誓約書」など、様々な名称が使われます。これらの名称の違いは、基本的に**企業の社内呼称の違い**であり、書類が果たす**役割自体はほぼ同じ**です。
共通しているのは、内定者(あなた)が「内定を受け入れ、入社する意思があること」を企業に伝えるための書類であるという点です。法律で定められた統一の書式があるわけではないため、企業が自由に名称を決めています。
書類名と役割の対応関係
| 書類の名称(企業例) | 主な役割 | 法的性質 |
|---|---|---|
| 入社承諾書 (承諾の意思を強調) |
内定を承諾したことの意思表示 | 雇用契約の成立を確約する書面 |
| 内定承諾書 (内定フェーズを強調) |
内定を承諾したことの意思表示 | 雇用契約の成立を確約する書面 |
| 入社誓約書/内定誓約書 (遵守事項を強調) |
入社後の服務規程や秘密保持等を遵守する誓約 | 労働契約の内容となる誓約を交わす書面 |
注意点:「誓約書」という名称の場合、承諾に加えて、経歴の虚偽がないことや秘密保持義務といった入社後のルール遵守に関する項目(誓約事項)が多く含まれている傾向があります。内容をより入念に確認する必要があります。
入社承諾書に法的効力はあるのか?内定辞退との関係
「この書類にサインしたら、もう内定辞退はできないのでは?」という疑問は、転職者が最も抱く不安の一つです。結論から言うと、入社承諾書を提出したとしても、原則として**内定辞退は可能**です。しかし、承諾書提出によって「労働契約」が成立したとみなされるため、その後の辞退には一定のルールと注意が必要です。
内定承諾書と「労働契約」の成立
採用選考の結果、企業が内定を通知し、内定者がそれを受諾した時点で、法的には「始期付解約権留保付労働契約」が成立したと解釈されます。
- 始期付(しきつき): 契約の効力発生が「入社日」に設定されていること。
- 解約権留保付(かいやくけんりゅうほつき): 企業側が、一定の合理的な理由(内定取消事由)が発生した場合にのみ契約を解除(内定取り消し)できる権利を留保していること。
入社承諾書は、この「内定受諾」の意思表示を書面で確実に行った証拠となり、契約成立を裏付ける文書となります。
辞退のルール:「民法第627条」の適用
内定辞退は、労働者(内定者)からの一方的な「労働契約の解約の申し入れ」にあたります。日本の民法では、期間の定めのない雇用契約(正社員など)の場合、労働者は**「いつでも解約(退職)の申し入れができ、申し入れから2週間が経過することで契約が終了する」**と定められています(民法第627条)。
- 内定承諾書提出後も、入社日の2週間前までであれば、法律上は自由に辞退が可能です。
- ただし、企業側は、内定辞退によって被った損害賠償請求を起こす可能性はゼロではありません。特に、入社直前で辞退し、企業に甚大な損害(例:高額な研修費の無駄、代替要員確保の失敗など)が発生した場合はリスクが高まります。
- 現実的には、企業が個人に対して訴訟を起こすケースは極めて稀ですが、マナーとして辞退の連絡はできるだけ早く、丁寧に行うべきです。
重要ポイント:
入社承諾書は「辞退できなくする」ためのものではなく、「入社意思の確固たる確認」と「契約成立の証明」のためのものです。提出後の辞退は可能ですが、企業への影響を考慮し、承諾の判断は慎重に行うべきです。
内定通知書・労働条件通知書・入社承諾書が届く順番と役割の違い
内定後の手続きでは、複数の書類が届きます。それぞれの書類の役割と届く順番を理解することで、あなたが何を、いつ、確認すべきかが明確になります。
① 内定通知書(採用通知書)
- 役割:企業があなたを**採用することを決定した**旨を伝える書類です。
- 届くタイミング:最終面接の合格後、最初期に届きます。
- 法的性質:企業からの「内定」という意思表示であり、労働契約成立の基礎となります。
② 労働条件通知書(雇用契約書)
- 役割:労働基準法により、企業が労働者に対して**必ず書面で明示しなければならない**とされる書類です。賃金、労働時間、業務内容、勤務地など、最も重要な労働条件が記載されています。
- 届くタイミング:内定通知書と同時、または内定通知書より若干遅れて届きます。
- 法的性質:労働契約の詳細な内容を規定する文書です。入社承諾書にサインする前に、この書類の内容と求人票の内容が一致しているかを入念に確認することが最重要です。
③ 入社承諾書(内定承諾書・誓約書)
- 役割:あなたが内定を承諾し、上記の労働条件に同意した上で入社する意思を表明する書類です。
- 届くタイミング:労働条件通知書など他の書類と一緒に送付され、あなたから企業へ返送します。
- 法的性質:契約の成立を書面で確約する文書です。
理想的な流れは、「内定通知書→労働条件通知書の内容確認→入社承諾書の記入・返送」となります。必ず**労働条件通知書で条件をしっかり確認してから、入社承諾書に署名・捺印する**というステップを踏んでください。この順番を間違えると、後で条件が異なっていた場合に交渉が難しくなります。
【実例つき】入社承諾書・誓約書の正しい書き方と記入時の注意点
入社承諾書は、採用側の担当者が最初に目にするあなたの「直筆の書類」です。書類に不備や書き損じがあると、入社前から「確認が不十分な人」「ビジネスマナーに欠ける人」といったマイナスな印象を与えかねません。ここでは、各項目をミスなく正確に記入するための具体的なルールと、転職者特有の疑問を解消します。
内定承諾日、氏名、捺印欄の正しい記入方法(西暦・和暦の使い分け)
書類の基本項目こそ、細心の注意を払う必要があります。特に、日付と氏名、そして捺印は、書類の有効性を担保する重要な要素です。
日付の記入ルール:提出日と承諾日の違い
- 日付欄が空欄の場合:あなたが入社を承諾した日(記入日)を記載するのが一般的です。企業から指定された提出期限日ではないので注意しましょう。
- 西暦か和暦か:企業から送られてきた書類にすでに西暦か和暦の印字がある場合は、それに合わせて記入します。印字がない場合は、他の書類(内定通知書など)で企業がどちらを使っているかを確認し、統一するのがビジネスマナーです。
- 略式表記の禁止:「R6」や「’24」といった略式表記はせず、「令和6年」や「2024年」のように正式な表記で記載します。
氏名・住所・捺印のルール
- 氏名:戸籍上のフルネームを楷書で丁寧に記入します。住所も略さずに正式名称で記載してください。
- 捺印:一般的に使用するのは認印で問題ありません。実印を押す必要はありませんが、企業が「実印で」と指示している場合は、指示に従いましょう。
- シャチハタはNG:インク浸透印(シャチハタ)は公的な書類には不向きとされており、避けるのが一般的です。朱肉を使う印鑑(三文判で可)を用意しましょう。
- 押印時の注意点:文字に重ならないよう、枠内に収まるように押します。印鑑が欠けたり、薄くなったりした場合は、訂正印ではなく、書類全体を書き直すのが原則です。
保証人欄の記入は必須か?依頼時の注意点と誰に頼むべきか
入社承諾書や誓約書には、「身元保証人」の記入欄が設けられていることがあります。これは、本人が業務中に会社に損害を与えたり、無断で退職したりした場合に、その保証人が損害の補填などの責任を負うことを求めるものです。
身元保証人欄の記入義務と法的な実態
- 記入の義務:「保証人欄の記入は任意」としている企業もありますが、「必須」としている企業が多いのが実態です。必須となっている場合、空欄のまま提出すると不備として差し戻しになるため、速やかに準備を進める必要があります。
- 保証人の責任範囲:身元保証契約の期間は、原則として最長5年と法律で定められています。また、保証人が負う賠償責任は、企業の損害の全てではなく、保証人が負うべき妥当な範囲に限定されるのが一般的です。過度に心配する必要はありませんが、依頼する際には責任の範囲について必ず説明しましょう。
身元保証人を誰に頼むべきか
企業が求める保証人の条件は通常、「成人」「定職に就いている(安定した収入がある)」「独立生計を営んでいる(本人と同居していない)」の3点です。
【保証人として適切な人・避けるべき人】
- 適任者:両親(特に定年退職前で収入が安定している場合)、配偶者、兄弟姉妹(成人している場合)。
- 避けるべき人:友人・知人(責任範囲が広いためトラブルになりやすい)、年金生活者(収入が不安定とみなされる)、あなた自身が保証人となること。
保証人を依頼する際は、必ず「何の書類の保証人になるのか」「どんな責任を負う可能性があるのか」を明確に伝え、了承を得た上で記入してもらいましょう。また、印鑑は保証人自身のものを使用してもらいます。
提出前に必ず確認すべき「労働条件通知書」との相違点チェックリスト
入社承諾書に署名することは、あなたが一連の労働条件に同意したことを意味します。そのため、承諾書にサインする直前で、改めて「労働条件通知書(または雇用契約書)」を詳細にチェックすることが、転職後の後悔を避けるための最重要アクションです。
相違点チェックリスト(最低限確認すべき6項目)
求人票で見ていた内容や面接で聞いていた話と、労働条件通知書に記載されている内容を、以下の項目について必ず照合してください。
- 賃金(年収・月給):基本給、固定残業代(含む時間数)、各種手当(住宅、通勤など)の金額と算定根拠は明確か。
- 労働時間・残業:始業・終業時刻、休憩時間、所定労働時間を超える残業の有無と、その上限時間は明確か。
- 勤務地・職務内容:具体的な配属先、部署、異動・転勤の可能性について、認識と相違がないか。
- 休日・休暇:年間休日数、完全週休二日制かそうでないか、有給休暇の付与条件は明確か。
- 試用期間:試用期間の有無、その期間(例:3ヶ月)、試用期間中の給与や待遇に差がないか。
- 退職に関する事項:定年年齢、自己都合退職時の手続き方法が記載されているか。
【相違点が見つかった場合の対処法】
もし求人票や面接時の説明と労働条件通知書の内容に重大な相違点が見つかった場合は、決してそのまま署名しないでください。すぐに採用担当者や転職エージェント(利用している場合)に連絡を取り、**「〇〇という条件について認識違いがあるため、確認・修正をお願いしたい」**と明確に伝え、書面で修正されたものを改めて受け取ってから署名しましょう。
特に給与や勤務地など、あなたのキャリアに直結する部分での妥協は、入社後の不満につながるため、この最終確認は絶対におろそかにしてはいけません。
内定が取り消されるリスクも!入社承諾書・誓約書に潜む「誓約事項」の危険性
入社承諾書や誓約書には、単なる入社意思の表明だけでなく、「もしもの時」に備えた企業側の防御策となる「誓約事項」が必ず含まれています。これらの事項は、内定期間中のあなたの行動を制限したり、最悪の場合、内定が取り消される根拠となったりする非常に重要な項目です。この章では、特に注意すべき誓約事項の法的側面と、転職者が陥りやすいリスクについて詳しく掘り下げます。
内定取り消し事由として記載される典型的なケース(経歴詐称・健康問題など)
前章で解説した通り、内定通知によって労働契約は成立していますが、企業側には「解約権(内定を取り消す権利)」が留保されています。ただし、労働契約法により、内定取り消しは「客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認できる事由」がある場合に限られます。入社承諾書や誓約書には、企業が想定する取り消し事由が明記されていることが多く、署名することで、あなたがその事由に同意したことになります。
内定取り消し事由のチェックポイント
一般的に、内定取り消し事由として認められやすいのは、以下の3つのカテゴリーです。
- 経歴詐称に関する事由:
履歴書や職務経歴書に虚偽の記載があり、それが採用選考の重要な要素(業務遂行能力、資格、学歴など)に関わる場合です。例えば、保有していない資格の記載、職務経験や退職理由の偽りなどが該当します。これは最も内定取り消しにつながりやすい事由です。 - 健康状態の急激な変化:
入社日までに、重度の病気や怪我により長期の休業が必要となり、企業が求めた職務遂行が客観的に不可能になった場合です。ただし、入社後の治療で回復が見込める程度の病気では、内定取り消しは不当とされる可能性が高いです。 - 重大な非行・法令違反:
内定期間中に、刑事事件を起こしたり、公序良俗に反する重大な非行があったりした場合です。企業の信用を著しく損なうと判断される場合に適用されます。
転職者への注意喚起:
在職中に転職活動を行った方は、現職での業務上の不正や情報漏洩が転職先に発覚した場合も、取り消し事由として扱われるリスクがあります。内定期間中であっても、常に誠実な行動を心がけてください。
入社後も効力を持つ「秘密保持義務(NDA)」の具体的な内容と注意点
多くの誓約書には、入社後だけでなく退職後も効力を持つ「秘密保持義務(Non-Disclosure Agreement: NDA)」に関する項目が含まれています。これは、企業の機密情報やノウハウを外部に漏らさないことを誓約させるものです。
秘密保持義務が適用される情報とは
あなたが誓約書に署名することで、以下の情報が保護対象となる可能性があります。
- 技術・ノウハウ:特許出願前の技術、製造方法、実験データなど。
- 営業・マーケティング:顧客リスト、仕入先情報、販売戦略、未公開の価格情報。
- 人事・財務:従業員の給与・評価情報、非公開の財務データ。
- その他:「機密情報」として企業が指定した全ての情報。
転職者が特に注意すべき「競業避止義務」
誓約書や別途の特約で、**「競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)」**が課される場合があります。これは、退職後一定期間、競合他社への就職や同種の事業を立ち上げることを制限するものです。
この義務は、職業選択の自由(憲法22条)を制限するため、法的に有効と認められるには厳しい条件があります。以下の4要件を総合的に考慮し、**「合理性」**が認められた場合にのみ有効となります。
- 制限期間:必要最小限の期間であること(一般的に6ヶ月〜2年程度)。
- 制限地域:制限が必要な範囲に限定されていること。
- 制限職種:実際に機密情報に関わる職種に限定されていること。
- 代償措置:制限期間中の補償金(代償措置)が支払われているか。
もし、あなたの誓約書に極端に長い期間(例:5年)や広い地域を対象とする競業避止義務が含まれている場合は、入社前に人事担当者にその有効性や代償措置について確認を求めるのが賢明です。
損害賠償や服務規程遵守に関する誓約書のチェックポイント
誓約書には、内定者として、そして入社後の社員として企業が定めたルールを遵守することを約束する条項も含まれています。
損害賠償に関する条項の過剰な要求に注意
「本人が企業に損害を与えた場合、その損害額を賠償する」という条項は一般的ですが、「違約金」や「賠償額の予定」を定めた条項には特に注意が必要です。
- 労働基準法第16条:労働基準法では、「賠償額を予定する契約」をあらかじめ結ぶことは禁止されています。例えば、「内定辞退をした場合は違約金として50万円を支払う」といった規定は、法律上無効となります。
- 実損害の賠償:ただし、あなたが故意または重大な過失によって企業に実際に損害(例:機密情報を流出させて株価が暴落したなど)を与えた場合、企業は実際の損害額に基づいて民事訴訟で賠償を請求することは可能です。
誓約書に「違約金」に関する文言があったとしても、法的には無効となる可能性が高いですが、企業との関係を良好に保つためにも、署名前にその意図を確認することが重要です。
服務規程・社内規定の遵守の確認
ほとんどの誓約書には、「会社の就業規則、服務規程、その他社内規定を遵守します」という誓約が含まれています。
- 事前に確認を:この誓約に署名する前に、可能であれば就業規則や服務規程の主要な部分(特に兼業・副業に関する規定)を見せてもらうか、その概要を確認しておきましょう。
- 入社後の行動規範:この誓約は、入社後のあなたの働き方(私用メールの使用、SNSでの発言、服装規定など)に関するルールを包括的に承諾したことを意味します。入社後に「知らなかった」とならないよう、服務規律に関する認識を擦り合わせておくべきです。
誓約書は、あなたが企業の一員として誠実に働くことを約束する「覚悟の証」です。形式的な署名で終わらせず、そこに記載されたリスクと義務を正しく理解し、納得した上で提出することが、新しい職場で円滑なキャリアを築くための第一歩となります。
【提出マナー完全ガイド】添え状・封筒の正しい書き方と郵送時の注意点
入社承諾書の提出は、内定後のプロセスにおける最後の「ビジネス文書」のやり取りです。郵送時のマナーや書類の扱いは、あなたのビジネススキルや細部への配慮を示すバロメーターとなります。この章では、人事担当者に好印象を与え、かつ重要な書類を安全に届けるための、添え状と封筒に関する完全なガイドラインを解説します。
添え状(送付状)の正しいテンプレートと入れるべき感謝の言葉
添え状(送付状)は、「いつ」「誰から」「誰へ」「何を」「何通」送ったのかを明確にするための書類であり、書類の紛失防止や、ビジネスマナーをわきまえていることを示すために必須です。企業から添え状の同封指示がなくても、必ず添付しましょう。
添え状の基本構成要素とテンプレート
添え状は、以下の7つの要素で構成し、A4用紙1枚にまとめます。手書きではなく、PCで作成・印刷するのが一般的です。
- 日付:投函日を右上に記載します(西暦・和暦は承諾書と統一)。
- 宛名:会社名、部署名、担当者名を記載します。(例:〇〇株式会社 人事部 採用ご担当者様、またはご担当者の氏名+様)
- 差出人情報:氏名、住所、電話番号、メールアドレスを右下に記載します。
- 件名:一目で内容がわかるように記載します。(例:内定承諾書ご提出の件/〇〇 〇〇)
- 頭語と時候の挨拶:「拝啓」から始め、「貴社におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。」といった定型文を続けます。
- 本文:書類送付の目的(内定承諾)と、選考への感謝、入社への意欲を簡潔に伝えます。
- 結語:「敬具」で締め、今後の抱負や指導を乞う一文を加えます。
添え状 本文のテンプレート例
この度の内定のご通知、誠にありがとうございました。心より御礼申し上げます。
つきましては、内定を謹んでお受けし、入社承諾書及びご提出を求められました書類一式を同封いたしましたので、ご査収のほどお願い申し上げます。
貴社の一員として貢献できますよう、入社までの期間でしっかりと準備を進めて参ります。入社後は一日も早く貴社にご奉公できるよう、尽力いたしますので、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
まずは書中をもちまして、入社の意思を表明させていただきます。
同封書類の明記
本文の後に、必ず以下の形式で同封した書類のリストを記載し、漏れがないか確認できるようにします。
記
- 入社承諾書・誓約書 1通
- 健康診断書 1通
- その他指定書類 1通
以上
封筒の選び方・表書き(宛名・朱書き)の書き方と「在中」のルール
封筒の書き方は、あなたの丁寧さを測る重要な尺度です。適切な封筒を選び、正確な宛名と朱書きを施しましょう。
封筒の選び方と書類の入れ方
- 封筒の色・サイズ:白または薄い茶色の**角形2号(A4サイズの書類が折らずに入るサイズ)**を選ぶのが最適です。重要書類であるため、折って提出する長形封筒は避けましょう。
- 書類の順番:上から順に、「添え状」→「入社承諾書(または誓約書)」→「その他の指示された書類」の順に重ねます。
- 書類の向き:書類はすべて表面(宛名や見出しが印刷されている面)を上にして揃え、クリアファイルに入れます。クリアファイルに入れることで、郵送中の折れや水濡れを防げます。
封筒の表書きと朱書きのルール
封筒の表書き(宛名)は、必ず油性の黒ペンで、楷書で丁寧に書きます。担当者名を略したり、誤字脱字があったりすることは厳禁です。
- 宛名:宛先住所は省略せず、会社名、部署名、役職名、氏名の順に正確に記載します。
- 敬称の使い分け:
- 部署・組織宛ての場合:「〇〇株式会社 人事部 御中」
- 担当者個人宛ての場合:「〇〇株式会社 人事部 〇〇 〇〇 様」
「御中」と「様」を同時に使うのは間違い(例:「人事部御中 〇〇様」はNG)なので注意しましょう。
- 朱書き:「重要書類在中」または「入社承諾書在中」と封筒の表面左下に赤字で記載し、定規を使って四角く囲みます。これは、受け取った企業側が迅速かつ確実に担当部署へ書類を届けるための重要な目印です。
- 裏書き:封筒の裏面には、あなたの住所、氏名を左下に丁寧に記載します。
- 封緘:書類を入れ終わったら、ノリでしっかりと封をし、封じ目の中央に「〆」または「封」の文字を書きます。これは、第三者によって開封されていないことを証明する役割があります。
提出期限に間に合わせるための郵送方法とメールで送る場合の注意点
入社承諾書の提出は、指定された期限を厳守することが大前提です。確実に、かつ期限内に書類を届けるための郵送方法と、例外的な対応についても解説します。
最適な郵送方法:「簡易書留」または「特定記録郵便」の利用を推奨
入社承諾書は、個人情報を含む重要文書です。普通郵便でも問題はありませんが、万が一の紛失や未着を防ぎ、提出した事実を明確にするために、追跡可能な郵送方法を利用することを強く推奨します。
- 簡易書留:郵便物の引受から配達までの記録が残ります。損害要償額(最大5万円)の範囲内で実損額が賠償されます。ただし、受取人の押印または署名が必要です。
- 特定記録郵便:郵便物の引受を記録するサービスです。配達記録は残りますが、受取人の受領印は不要です。簡易書留より料金が安く、追跡ができるため、最も手軽で人気があります。
切手の額面:A4クリアファイルに入れた角形2号封筒は、通常「定形外郵便物」となり、重量に応じて料金が変わります。特に簡易書留や特定記録郵便を利用する場合、ポスト投函はできませんので、必ず郵便局の窓口で重量を測ってもらい、正確な切手料金を確認しましょう。切手不足は失礼にあたります。
提出期限の考え方
提出期限が設定されている場合、それは**「必着」**が原則です。つまり、その日のうちに企業側に届いている必要があります。期限ぎりぎりではなく、余裕をもって投函することが重要です。間に合わない場合は、提出期限前に必ず採用担当者に連絡し、遅れる旨とその理由、いつ投函するのかを伝えましょう。
電子データ(PDFなど)での提出を求められた場合の注意点
近年、デジタル化が進み、入社承諾書を印刷・署名・捺印した上で、スキャンしてPDFファイルで提出(メール添付)を求められるケースも増えています。
- PDF化:スマートフォンで撮影するのではなく、コンビニのマルチコピー機やスキャナーを利用し、鮮明なPDFファイルを作成しましょう。
- ファイル名:「入社承諾書.pdf」ではなく、「内定承諾書_氏名(フリガナ)_20251101.pdf」のように、誰の書類で、いつ作成されたものか分かるように変更します。
- メール送信:メールの件名は「【内定承諾書提出】氏名」のようにわかりやすくし、本文に添え状と同じく内定への感謝と入社意欲を簡潔に記載します。パスワード設定の指示があれば、必ず従いましょう。
郵送手続きの最後の一歩まで気を抜かず、ビジネスマナーに則って書類を提出することで、あなたは企業に対して「安心して入社を任せられる」という確かな印象を与えることができるでしょう。
内定保留・辞退の伝え方:入社承諾書提出前後のアクションと例文集
複数の企業から内定を得た場合や、現職の退職交渉が長引いた場合など、やむを得ず内定の意思決定を保留したり、最終的に辞退したりする必要が出てくることがあります。内定の保留や辞退は、企業側の採用計画に大きな影響を与えるため、誠意と最大限の配慮をもって伝えることが、トラブルを避け、自身のキャリアに傷をつけないための鉄則です。この章では、状況に応じた具体的なアクションと、そのまま使える例文を詳しく解説します。
入社承諾書提出期限の延長を依頼する際の電話・メール例文
内定を承諾するかどうか迷っている場合や、他社の選考結果を待っている場合は、提出期限が来る前に、**必ず延長の依頼**を行いましょう。無断で期限を過ぎてしまうことは、最も印象を悪くする行為です。
延長依頼の基本ルールと期間
- 連絡方法:原則として、まずは電話で担当者に直接依頼し、後で確認の意味も込めてメールを送るのが最も丁寧です。
- 伝えるべき内容:
- 内定への感謝
- 期限延長をお願いしたい理由(「他社の選考結果を待っている」と正直に伝えるのはOK)
- いつまでに返答できるかという具体的な希望日
- 期間の目安:延長期間は、一般的に**1週間から長くても10日程度**が限度とされています。無理な要求は避けましょう。
内定承諾書の提出期限延長を依頼するメール例文
件名:内定承諾書の提出期限延長のお願い(氏名)
〇〇株式会社
人事部 採用ご担当者様
お世話になります。内定をいただきました〇〇 〇〇です。
この度は、光栄な内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。心より感謝申し上げます。
つきましては、大変申し上げにくいお願いなのですが、内定承諾書の提出期限(〇月〇日)について、ご相談させていただきたくご連絡いたしました。
貴社への入社については前向きに考えておりますが、現在、並行して進めていた選考が最終段階にあり、そちらの結果を待って、慎重に最終的な意思決定を行いたく存じます。
誠に恐縮ではございますが、つきましては、提出期限を〇月〇日(〇)まで延長していただくことは可能でしょうか。
お忙しいところ大変恐縮ですが、ご検討いただけますと幸いです。もちろん、〇月〇日には必ず最終的なお返事をさせていただきます。
引き続きよろしくお願い申し上げます。
署名(氏名、連絡先)
承諾書提出『前』に内定を辞退する際の最も丁寧な伝え方と注意点
入社承諾書を提出する前に辞退する場合が、最もリスクが少なく、企業側への影響も最小限に抑えられます。辞退の意思が固まったら、即座に、かつ最大限の配慮をもって伝えることが重要です。
辞退連絡の鉄則:電話で伝えるべき理由
辞退の意思は、メールではなく、**必ず電話で**採用担当者へ直接伝えるのがビジネスマナーです。内定は、企業が時間とコストをかけて下した重要な判断の結果であり、メール一本で済ませるのは失礼にあたります。電話で直接伝えることで、誠意が伝わり、円満な辞退につながります。
- 電話で伝えるべきこと:内定への感謝、辞退の事実、辞退理由(抽象的で問題ない)、謝罪の意。
- 辞退理由の伝え方:「他社からご縁をいただきました」「自身のキャリアプランを熟考した結果、別の道に進む決断をいたしました」など、企業を否定しない、前向きで抽象的な理由に留めましょう。具体的な比較や、企業の批判は避けてください。
内定辞退の電話後のフォローメール例文
件名:内定辞退のご連絡(氏名)
〇〇株式会社
人事部 採用ご担当者様
お世話になります。本日(〇/〇)お電話いたしました〇〇 〇〇です。
この度は、貴社より内定をいただいたにもかかわらず、誠に申し訳ございません。本日お電話にてお伝えさせていただきました通り、熟慮の末、今回は内定を辞退させていただきたく、改めて書面にてご連絡いたしました。
選考にお時間を割いていただいたにもかかわらず、このような結論となり大変心苦しく、心よりお詫び申し上げます。
貴社の益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。
末筆ではございますが、選考を通じていただきましたご縁に深く感謝申し上げます。
署名(氏名、連絡先)
承諾書提出『後』に内定を辞退せざるを得ない場合の法的リスクと対処法
入社承諾書を提出した後でも、法律上は入社日の2週間前までであれば、内定辞退は可能です(民法627条)。しかし、承諾書提出後は、企業側も入社の準備を本格化させているため、辞退の難易度は格段に上がります。
法的リスクの現実と対処法
- 契約成立の確定:承諾書提出により、「始期付解約権留保付労働契約」が確定的となります。辞退は「解約(退職の申し入れ)」として扱われます。
- 損害賠償請求:企業側が被った**「具体的な損害」**について、賠償請求を受けるリスクはゼロではありません。ただし、前章で述べたように、労働基準法により「違約金の予定」は無効であり、実際に訴訟に至るケースは極めて稀です。
- リスクとなるケース:辞退が入社直前(特に2週間以内)であり、企業が代替人材の確保や研修などに多大な費用を投じていた場合です。
承諾書提出後の円満な辞退手順
辞退の意思を伝える時期が遅れるほど、企業側の損失は大きくなります。誠意を持って、以下の手順で対応しましょう。
- できる限り早く連絡する:辞退の意思が固まり次第、即座に採用担当者に電話をかけます。
- 深い謝罪と理由の説明:内定承諾書を提出した上で辞退するという**「非礼」**について、深く謝罪します。辞退の理由は、同様に抽象的に留めつつも、「大変申し訳ない」という気持ちを最大限に伝えることが重要です。
- 提出した書類の扱い:企業側から要求があれば、提出済みの入社承諾書を返却してもらうか、破棄してもらうよう依頼します。
いずれのケースにおいても、内定先企業とは今後取引先として、または業界内で何らかの形で関わる可能性があります。**最後までプロフェッショナルな対応**を貫き、円満な形で転職活動を終えることが、あなたの今後のキャリアを支える重要な要素となるでしょう。
【トラブル回避】内定後の必要書類準備と手続きのロードマップ
入社承諾書の提出を終えると、いよいよ入社に向けた最終準備段階に入ります。この時期に最も重要となるのは、現職の円満退職交渉と、新しい会社への入社手続きに必要な公的な書類の準備です。これらの手続きをスムーズに進められるかどうかが、気持ちよく新しいキャリアをスタートできるかの鍵を握ります。
ここでは、転職者が必ず提出を求められる代表的な書類リスト、現職への退職交渉を円滑に進めるための具体的なコツ、そして内定後によくある健康診断や身元保証人に関する疑問を網羅的に解説し、トラブルを回避するためのロードマップを提供します。
企業が求める代表的な提出書類と準備が必要なもののリスト
入社手続きで提出を求められる書類は多岐にわたりますが、大別すると「公的機関で発行してもらうもの」と「現職から受け取るもの」に分けられます。特に、現職から受け取る書類は退職時にもらい忘れると手続きが煩雑になるため、計画的な準備が必要です。
【カテゴリー別】提出書類チェックリストと重要度
| 書類のカテゴリー | 書類名 | 入手先・備考 | 重要度 |
|---|---|---|---|
| 社会保険・税金関連 | 年金手帳(基礎年金番号通知書) | 年金事務所または前職から返却 | **最重要** |
| 雇用保険被保険者証 | 前職の会社から退職時に交付 | **最重要** | |
| 源泉徴収票(直近1年分) | 前職の会社から退職時に交付 | **最重要** | |
| 扶養控除等(異動)申告書 | 入社先企業から配布 | 必須 | |
| 資格・証明関連 | 最終学歴の卒業証明書 | 卒業した学校の事務室に申請 | 高 |
| 資格証明書のコピー | 企業が求めるもののみ | 中 | |
| 健康・その他 | 健康診断書 | 医療機関で受診(企業指定の場合あり) | 高 |
| 身元保証書(指定書式) | 企業から配布 | 高 | |
| 住民票記載事項証明書 | 市区町村役場で発行 | 中 | |
| 給与振込先届 | 入社先企業から配布 | 必須 |
特に注意すべき3つの書類の入手方法
- 雇用保険被保険者証:
現職で雇用保険に加入していた証明書です。退職時に企業から受け取るのが原則ですが、企業が保管している場合もあるため、退職交渉時に必ず返却を依頼してください。万が一紛失した場合は、ハローワークで再発行が可能です。 - 源泉徴収票:
年末調整に必須の書類です。退職後1ヶ月程度で郵送されるのが一般的です。新しい会社での年末調整に必要となるため、紛失しないよう厳重に保管しましょう。 - 年金手帳(基礎年金番号):
多くの場合、基礎年金番号の記載があれば手帳本体の提出は不要です。番号が分からない場合は、ねんきん定期便や年金ネット、または年金事務所に問い合わせて**「基礎年金番号通知書」**を発行してもらいます。
これらの公的書類は、発行に時間がかかるものも多いため、入社手続きの依頼を受けたら、すぐに現職の人事部門や公的機関への申請手続きをスタートさせることが、スムーズな入社への第一歩です。
現職への退職交渉と入社日の調整を並行して進める際のコツ
転職者が最も神経を使うのが、内定を承諾した後の「現職への退職交渉」と「新会社との入社日調整」です。このプロセスを間違えると、現職との関係が悪化したり、最悪の場合、入社日がずれ込んでトラブルになったりします。
退職交渉を円滑に進めるための3原則
- 内定承諾と同時に退職意思を伝える:
転職先への入社意思が固まり、入社承諾書を提出した後、即座に直属の上司に退職の意思を伝えます。承諾前に伝えるのはリスクが伴います。 - 「退職理由」はポジティブかつ一貫性を保つ:
現職への不満ではなく、「新しい環境で〇〇というキャリアに挑戦したい」「貴社では得られない経験を積みたい」など、あくまで前向きな理由で伝えます。会社や上司への感謝の気持ちを忘れず、引き止めに遭っても、決意が揺るがないことを丁寧に伝えます。 - 就業規則を確認し、期間に余裕を持つ:
会社の就業規則で「退職の○ヶ月前に申し出ること」と定められているかを確認します。法的には2週間前(民法627条)で足りますが、円満退社のためには、業務の引き継ぎ期間を考慮し、通常1~2ヶ月程度の余裕を持って申し出ることが理想です。
入社日調整の最適な戦略
入社日を決定する際は、「現職の引き継ぎに必要な期間」と「転職先の希望日」のバランスを取ることが重要です。
- 転職先に伝える希望入社日:現職の退職交渉に入る前に、「現職の引き継ぎがあるため、最短で〇ヶ月後から入社可能です」と、少し余裕を持った期間を伝えておくと、後で調整しやすくなります。
- 現職への提案:上司と話し合い、具体的な引き継ぎ計画を作成します。現職の業務に支障が出ないよう、**「業務の棚卸し→マニュアル作成→引継ぎ実行」**というステップを明確に示し、具体的な退職日を確定させましょう。
- 有給休暇の消化:退職日と入社日の間に有給休暇をまとめて消化することで、体力的・精神的な休息期間を確保できます。この期間は、新しい会社への提出書類準備や引っ越しなどに充てるのが賢明です。
内定後の健康診断・身元保証人の手続きに関するQ&A
内定後の手続きで、特に健康診断と身元保証人は、個人情報の取り扱いや責任の所在に関わるため、多くの疑問が生じます。ここでは、よくある質問とその専門的な回答を提供します。
Q1:入社前の健康診断は必須ですか?また、費用はどちらが負担しますか?
A:原則として、必須です。
労働安全衛生法により、企業は労働者を雇い入れる際、医師による健康診断を実施することが義務付けられています(労働安全衛生規則第43条)。これは、「雇い入れ時の健康診断」と呼ばれ、内定者が対象となります。
- 費用負担:企業には健康診断を実施する義務があるため、費用は原則として企業側が負担すべきとされています。ただし、企業が指定する診断項目を、内定者が個人的に受診済みの診断書で代替する場合など、一部例外的に個人負担となるケースもあります。事前に人事担当者に確認しましょう。
- 不合格の可能性:健康診断の結果、直ちに入社取り消しになることは稀です。内定取り消しが認められるのは、「業務遂行に重大な支障をきたす」と客観的に判断できる場合に限られます(例:長期間の療養が必要など)。
Q2:身元保証人の依頼で、両親以外に頼むことは可能ですか?また、保証人になってもらう人には何を伝えるべきですか?
A:可能です。依頼時には、責任の範囲を明確に伝えましょう。
身元保証人は、成人していて安定した収入があり、独立生計を営んでいる(本人と同居していない)ことが一般的な条件です。両親が高齢で年金生活の場合などは、兄弟姉妹や配偶者、親戚に依頼することも可能です。
- 誰に頼むか:保証人には、将来的に賠償責任を負うリスクがあるため、信頼関係があり、金銭的な負担能力もある親族に依頼するのが最も安全です。友人に依頼するのは、後のトラブルを避けるためにも避けるべきです。
- 伝えるべきこと:
- 何の目的の保証人であるか(損害賠償、服務規程遵守など)
- 身元保証契約の期間は最長5年であり、期限が来れば自動的に効力が切れること(身元保証ニ関スル法律)。
- 保証人が負う賠償責任は、必ずしも損害の全額ではなく、裁判所が妥当な範囲で定めた額になること。
依頼する際には、企業の指定用紙に必要事項を正確に記入してもらい、保証人自身の捺印(実印の指定がなければ認印)を押してもらう必要があります。この手続きも、余裕をもって進めてください。
内定後の各種手続きは煩雑に感じるかもしれませんが、これらを一つ一つ丁寧に進めることが、あなたのプロフェッショナルとしての評価を高め、気持ちの良い入社につながります。このロードマップを活用し、最終準備を万全に整えましょう。
よくある質問(FAQ)
入社承諾書は、内定辞退するときの法的効力はあるのでしょうか?
入社承諾書を提出した後でも、原則として**内定辞退は可能**です。承諾書の提出により法的には「始期付解約権留保付労働契約」が成立しますが、期間の定めのない雇用契約の場合、労働者は民法第627条に基づき、**退職(解約)の申し入れから2週間が経過すれば契約を終了できる**と定められています。したがって、入社日の2週間前までであれば、法律上は自由に辞退できます。
ただし、入社直前での辞退は企業に損害を与える可能性があるため、誠意をもってできるだけ早く、電話で伝えることがビジネスマナーであり、円満な解決につながります。
入社承諾書と内定通知書は、どちらが先に届くのが一般的ですか?
一般的には、**内定通知書(採用通知書)が先に届き**、その後に内定者が入社を承諾した意思を示す**入社承諾書**が提出されます。
- 内定通知書:企業があなたを採用することを決定した旨を知らせる書類です。
- 労働条件通知書:内定通知書と前後して届き、賃金や労働時間などの重要事項が記載されています。
- 入社承諾書:あなたが労働条件に同意し、入社を確約する意思を表明し、企業へ返送する書類です。
承諾書にサインする前に、必ず労働条件通知書(雇用契約書)の内容を隅々まで確認することが、トラブルを避けるために最も重要です。
入社承諾書と内定承諾書の違いはありますか?
基本的に、**書類の役割や法的性質に大きな違いはありません**。これらは**企業の社内呼称の違い**であり、どちらも内定者が「内定を受け入れ、入社します」という意思を正式に表明するための書類です。
ただし、「入社誓約書」や「内定誓約書」という名称の場合、単なる承諾だけでなく、秘密保持や服務規程の遵守といった**「誓約事項」**がより詳細に含まれている傾向があるため、内容をより入念にチェックする必要があります。
内定承諾書の提出期限が過ぎてしまったらどうすれば良いですか?
提出期限が過ぎてしまった場合は、**すぐに採用担当者に電話で連絡し、お詫びと提出が遅れた理由、そしていつまでに提出できるかを明確に伝えてください。**
無断で期限を過ぎることは、企業からの信頼を大きく損ないます。もし、期限が過ぎる前に意思決定が難しいと分かっていた場合は、事前に電話やメールで延長を依頼すべきでした。遅れてしまった場合でも、最大限の誠意を伝えることが最優先です。その際、「本日中に投函いたします」など、具体的な対応を約束しましょう。
まとめ
本記事では、転職活動を成功させたあなたが、気持ちよく新しいキャリアをスタートさせるために必須の最終ステップ、「入社承諾書・誓約書」に関する疑問と不安を完全に解消するための【完全ガイド】として、そのすべてを解説しました。
🚀 新しい門出を成功させるために確認すべき最重要ポイント
この書類提出で失敗しないために、以下の要点を再確認してください。
- 【法的効力】入社承諾書提出後も、原則として入社日の2週間前までは内定辞退が可能です。ただし、企業への影響を考慮し、判断は慎重に行い、辞退時は最大限の誠意を尽くしましょう。
- 【最重要確認事項】入社承諾書に署名する直前に、必ず労働条件通知書(給与、勤務地、職務内容など)をチェックし、求人内容との相違がないか確認してください。
- 【書類の書き方】日付の表記(西暦・和暦)、氏名、捺印(シャチハタNG)は、楷書で丁寧に記入し、書類に不備がないよう細心の注意を払うことが、あなたのプロフェッショナルな姿勢を示します。
- 【提出マナー】入社承諾書は必ずクリアファイルに入れ、添え状を添付し、封筒の表には「重要書類在中」と朱書きして、特定記録郵便などの追跡可能な方法で提出期限に間に合わせましょう。
- 【リスク管理】誓約書に記載された競業避止義務や内定取り消し事由(特に経歴詐称)を理解し、入社後のルールを承諾した上で提出しましょう。
内定後の手続きは、あなたの転職の「仕上げ」です。このステップを完璧にこなすことで、あなたは企業に「細部まで配慮が行き届く、信頼できる人材」という第一印象を与えることができます。不安な要素はすべて解消されました。あとは自信を持って、書類を完成させ、郵送するだけです。
✅ 最後に:あなたの行動が未来を拓く
あなたはすでに内定という成果を勝ち取っています。最終関門である入社承諾書の提出も、この記事のチェックリスト通りに進めれば、必ず成功できます。
さあ、今すぐ労働条件通知書と承諾書を取り出し、チェックリストと照らし合わせながら、最後の確認を行いましょう。そして、ビジネスマナーに則った提出を完了させ、新しいキャリアへの第一歩を力強く踏み出してください!



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